CNFを使用した「メモリーコットン」が大阪・関西万博で脚光

大阪・関西万博が目指す、未来社会の共創
2025年4月13日、大阪府夢洲(ゆめしま)で大阪・関西万博が開幕しました。万博の正式名称は「2025年日本国際博覧会」。「EXPO2025」とも呼ばれます。大阪府での万博開催は1970年以来55年ぶりで、日本での万博開催は2005年の「愛・地球博」(愛知県)以来20年ぶりです。
大阪・関西万博のメインテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。158の国・地域と7つの国際機関をはじめ企業や団体が参加して、人類共通の課題解決を世界で共有し、英知を集め、アイデアを交換し、未来社会を共創することを目指しています。
NCJが期間限定でパビリオン展示
ナノセルロースジャパン(NCJ)は6月10日から6月16日までの1週間、万博会場内のパビリオン「フューチャーライフヴィレッジ(Future Life Village)」で、期間限定の展示を行いました。NCJは、①産官学の連携によるナノセルロースの技術開発と普及、②会員企業間の協業や事業化推進によるナノセルロースの実用化・産業規模の拡大、③国際標準化による日本の産業競争力の向上を目的として2020年4月に設立した団体です。
フューチャーライフヴィレッジは、人が主役のパビリオン。NCJは「ナノセルロースがもたらす持続可能な未来生活」をテーマに、タイトル「うわっ、うわっ、うわっ、ナノセルロース」のもと、来場者がナノセルロースのある世界を体験し、身近に感じてもらうことを目的に展示を行いました。
注目を集めた「メモリーコットン」のポロシャツ
開催期間中、来場者の注目を集めた展示の一つが「メモリーコットン(memory cotton🄬)」加工のポロシャツでした。2024年4月、NCJの幹事会員である大王製紙株式会社は、透明度の高いCNF(セルロースナノファイバー)製造技術の開発に成功し、新たに高透明度CNF水分散液「ELLEX-C(エレックスクリア)」をラインナップに加えました。
メモリーコットンは、富士紡ホールディングス株式会社(フジボウ)と大王製紙が共同開発した、新世代型イージーケア加工の商品で、機能性繊維の加工剤にELLEX-C が用いられています。メモリーコットンのポロシャツは展示のほか、ブースで説明にあたったスタッフのポロシャツにも採用されました。
※memory cotton🄬は富士紡ホールディング株式会社の登録商標です。
植物が原料のCNFは世界で研究開発が進む
CNFは、植物が原料の極めて細かい繊維でできた素材です。植物の主成分であるセルロースを、ナノメートル(1ミリの100万分の1)単位まで細く割いた繊維状の物質。主成分は炭水化物で、野菜などにも含まれる食物繊維の一種です。軽い、強い、熱で膨張しにくい、吸水性が高いなど、さまざまな特徴があり、その用途は①水溶性の状態で使われる水系の用途、②粉末などの状態から他の素材に混ぜて使われる複合材料用途に大別されます。再生可能な資源を用い、様々な特徴を持つCNFは、世界中で研究開発が行われています。
メモリーコットンの開発で実証されたELLEX-Cも、化粧品、塗料、インキなど意匠性が要求される用途や、光学系材料用途への展開が期待されています。

メモリーコットンは未来志向の加工商品
ELLEX-Cは繊維幅3~4ナノメートルまで容易に微細化できるので、高い透明性を有しています。メモリーコットンの開発では、生地の色を変えずに寸法安定性を付与し、防縮・防シワ加工を実現しました。大王製紙の従来の高透明度CNFでは加工工程での分散性に課題がありましたが、ELLEX-Cはこの点についても改善されています。
また、ホルムアルデヒドを含まないなど従来法に比べより環境にやさしい薬品や製造技術を用いているのも特徴で、SDGsに取り組むフジボウの「環境配慮型加工シリーズ」の商品コンセプトにも合致しています。
ニット本来の柔らかさを損なわない加工を実現し、洗濯を繰り返しても効果が持続するなど、メモリーコットンは、フジボウが培ってきた独自の加工技術と、大王製紙の新たなCNF製造技術が生んだ未来志向の加工商品と言えるでしょう。